永遠に醒めない夢は

あの日に思いを巡らすと蘇るのは今にも雨が降り出しそうな湿った初夏の始まりの匂いで、たった一週間前の記憶なのに、指の隙間から砂が零れ落ちていくようにペンミの光景が薄く痩せていき昔の思い出へと変化していきつつある。それでも古びたパソコンを引っ張り出してこうしてキーボードを叩くことを辞められないのは、衝動を伴ったあの日の興奮が、今でも不意に心臓を焦がすように燃えているからであり、全ての記憶が琥珀糖のようなキラキラした過去になる前に、この電子の海に書き残しておきたいと思ったからだ。

 

と仰々しい前置きを並べ立てておりますが、実際のところ「新規ハイ」という猛々しい熱量が時間が経てども留まることを知らないからである!

太宰治は自身の小説にて「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」という一文をしたためていて、その豊かなエネルギーに満ち溢れた言葉に感銘を受けてきた身なのですが、まるで恋や革命のように胃の底から湧き出るあの時の高揚感は今でも静かな熱を帯びていて、そんな人生でまたいつ訪れるかわからない陶酔感が残っているうちに形にしておきたいと思ったのが、もうひとつの理由です。

 

それにしても新規ハイの威力は凄まじいものがあって、まるで隕石のように駆け抜けた一週間で身体が疲弊しているはずなのに「日本ツアー100公演行きた~い^^(※ない話)」になっており本当にオタクと狂気は紙一重だなと感じています。そのうち、火力発電や地熱発電のように、オタクの熱量も電気に変換できるのではないだろうか。

 

 

 

さて、ディエイトくん大好き人間としてはやはり何かあるたびに神輿を担ぎお祭り状態になるわけですが、オープニングで一目見た感想は「綺麗だというただひたすらにシンプルな衝撃だった。

何度もブルーライトが光る液晶越しに見ていたはずなのに、肉眼で見る姿は皮膚の質感やら造形の美しさやらとにかく「生きて」いる人間の情報量が死角からドカン!とやってきて、その美しさに団扇を振るどころか、まるでキリスト信徒の十字架のように惚れ惚れとした視線を向けながらギュッと握りしめていた。脳内の映写機では、歓声という名の花束に包まれてトロッコで目の前を通りすぎていく1枚1枚が、スローモーションのようにまばゆい輝きを放ちながらも、ゆっくりと再生されていく。「カッコいい」も「かわいい」も私のいるスタンド席の前に来た途端すべて真っ白に無効化されて、黄金の草原に降り立ったナウシカのように清らかに柔らかく微笑んでファンに手を振る姿を、心臓がいっぱいになりながらも、食い入るように見つめていた。そしてようやくトロッコが視線の届かない遠いところまで行ってから、自分の「好き」のベースに信仰と尊敬があることを思い知っては、ドームの天井に向かって深く愛しの溜息を吐く。

きっと30秒にも満たないあの時間は、私の海馬に色濃くそしてくっきりと鮮明な痕をつけていて、夢の国の魔法がかかったみたいな穏やかな気持ちと共に頭の中で眠っています。

 

そしてもうひとつ、私は彼らの「アイドルであると同時に、同じ時代を生きる人間」である絶妙なバランスが好きです。これは私自身がSVT世代であり、そういった仲間のパワーに惹かれているから、というのもあるけれど、SEVENTEENの作品には苦しみに対する共感こそあれど、それをドラマチックに彩るための「悲劇」って少ない気がする。日常の孤独感や苦悩という感情にシャッターを押していても、それを過度に暗い演出に落とし込めることをしないその感性が好きです。「情緒に対する品性」と言えるほどの彼らの凛とした強かな知性が本当に大好き。

 

だってさぁ、カッケェじゃん!(大声)

 

SEVENTEENって13人それぞれが自分の人生の主人公のようなグループであることを様々なコンテンツでよく思うけど、全員がその人なりの知性と矜持を司っているのが好きで、それを強みにしているのが好きで、信念という名の爪はちゃんと磨きながら隠しているところがさいつよで大好きなんだよな…

 

そして、「地球の人口は約80億人だそうです。この地球で僕たちが会えることは奇跡です。」と話したホシくんのメントを聞きながら「僕らは最初で最後の今を生きているんだよ」という舞花の歌詞がブワァッとリフレインした。結局のところ、目には見えない「奇跡」は同じ時代を生きているから生まれるものであるのだ。持続的な愛は一方的に注がれるものじゃなくて、君と僕の間で創り上げて繋げていくものだと歌ったのは(奇しくもセトリ落ちした)ハピエンだけど、アイドルを幻想としない、偶像の中に信念と信頼いう強固な一本芯が通った彼らの確かなのことを、私は本能から愛している!

 

ちなみにブログの表題にも拝借した言葉は、最近読んだ「永遠に醒めない夢はそれはもう夢ではなくべつの何かだ」という短歌で、それを目で捉えた瞬間単純明快な私の脳にはパチンと電流が走った。あの時、舞花が終わり本編が一旦幕を閉じた熱気が篭る無機質なドームで、薄桃色の花びらだけが宙をひらひらと舞っている光景をずっと覚えている。夢と現実が交差した不思議なときめきに満ちていたあの空間は、彼らの気配は既に「ない」のに彼らが「いた」事実だけは色濃く残っていて、あまりのロマンチックさにクラクラと眩暈がした。

 

アイドルとファンの間で創造される思い出はいつか醒める長い夢なのかもしれない。けれども、それでも決して消えない永遠の何かも同じくらいあって、きっとそれを私たちはLOVEと呼ぶのだろう。人生でもう二度と出会えないかもしれない「奇跡」、その瞬間に立ち会えたことをすごく嬉しく思います。これからもウチらの人生共々、お互いに末永くよろしくお願いします!